東洋医学とは、非常に簡単に言うと気の医学だと私自身はとらえています。専門的なことを言い出したら切りがありませんし、東洋哲学まで踏み込むと思うので余計に難しくなりかねません。東洋医学に興味がある方は、いくらでも専門書がありますのでそちらをどうぞ。万物を陰と陽の二つにわけ、それぞれの相関を表現した陰陽論、そして同じく万物を5つにわけそれぞれの相関相克関係を表した五行論。この二論が基本です。そしてこの二論の基礎になっているのが気です。万物は気からできている、という根本原理です。

太極図

陰陽論を表す太極図

 

万物は気から成り立っており、そして一時もとどまることなく流れ、変化し続けることを表してると私はとらえています。陰が極まった瞬間から陽が生まれ同時に陰は徐々に弱まっていき、陽が徐々に増加し極まった瞬間に陰が生まれます。森羅万象、あらゆることは命も含め生々流転、万物は一時も停滞せず常に変わり続けるのです。いつも同じ、つまり変化しないと言うことは『死んでいること』と同意です。

五行図

五行論の相生相克関係を表した図(クリックすると拡大します。)

 

実線の矢印は相生(そうせい)を、破線の矢印は相克(そうこく)を表してます。色にも意味があり、青、赤、黄、白、黒が五行のそれぞれと関係しています。凡例の一部に(+/-)や(-)が付いていますが、これはその印が付いているものがその程度によってプラスにもマイナスにも、もしくはマイナスの影響を与えることを表しています。描いたのは五行の一部ですが、実生活においてこの五行がどれほど病と体の関係を正確に表しているかご理解になれるかと思います。

 

例えば、強い怒りを感じたとします。怒りの属性は肝です。怒りによって肝気が上昇します。強すぎる怒りによって顔が青黒くなります。青は肝です。肝気の上昇と同時に肝は目に繋がっていますので目(瞳孔)が開き充血してきます。また、子供で顕著ですが怒ると涙が出ます。涙は肝の属性だからです。筋肉も肝の属性ですので肝気の異常により筋肉が過剰に反応、結果としてわなわなと体が震えてきます。また、相手を大声で呼びつけたりします。

 

相生関係で次の心へ影響を与えるため心が活性化し、心は血脉(血流)を司っているため血圧が上がり血管が浮き上がってきます。(目が充血するのもこのためです。)

 

同時に相克関係で脾を抑制するため食欲がなくなります。基本的に相克は抑制に働くので、食欲が無くなるのが普通です。これは自律神経である交感神経の働きと同じで、強い怒り(ストレス)は交感神経を強く働かせますので、その際の人間の行動はFight or Fright(戦うか逃げるか)です。交感神経はそのために血流を消化に使う内臓にはまわさず、動くための筋肉にまわします。結果、交感神経が強く働いている間は内臓は動きませんので、空腹も感じません。(交感神経の働きなど約2000年前はそんなこと知らなかったはずですが、観察などからその事を見いだしたのでしょう。それをこうして現在にまで伝えている東洋医学の凄さがわかります。)

 

強い怒りによって活性化しすぎている肝を抑えるためには、肝を抑制できる肺(相克関係)と心(瀉)を使います。相克関係では、白い色の食材を使った食事、辛いもの(唐辛子等の辛さです)を摂取、号泣すると肝を抑えることができます。瀉として、苦いもの、赤い色の食材を使った料理、腹の底から大笑いすること。この二つをうまく組み合わせることにより、怒りに狂っている肝を中庸に持っていくことができます。

 

肝を抑制した後、痛めた肝を養うために酸っぱいものを摂取、緑の濃い色の食材を使った食事を取ります。ちなみに、あまりに頻繁に強い怒りを感じる、強い怒りがずっと持続しているという場合、心が異常に影響を受け続けるので結果として高血圧に、ひどい時には脳出血や心筋梗塞といった循環器疾患を引き起こします。

 

皆さんも経験的に知っておられるはずです。強い怒りを感じたときは食欲が無くなること、そして号泣したり大笑いすると怒りが綺麗さっぱり無くなることも。(最近では脳科学の観点からも、号泣が脳内のストレスを非常に効率的に消し去ることが分かっています。)あまりに強い怒りを感じたとき自然に涙が出てくるのは、肝が涙と関連しているからです。色の事で言うなら、最近の研究で青色LEDの光は人の感情を沈静化させることが分かっています。青は肝、つまり怒りの感情と繋がっているので、ある量を浴びると怒りの感情を抑制(つまり沈静化)する方向に働きます。

 

実際は食事や感情だけで活性化しすぎている経絡を抑えるのは難しいです。そのために鍼灸と漢方が存在しています。食事や感情のコントロールは普段の養生のためです。

 

西洋医学でこの感情と体の影響(特に免疫系)を取り上げているのが『精神神経免疫学』(Psychoneuro Immunology: PNI)と言う分野です。東洋医学が2000年前から指摘してきたことに、ようやくここ20年ほどでその相関関係を研究しだしたところです。それだけに、西洋医学ではまだまだ感情と体の関係についての認識度は低いのが現状です。

 

西洋医学では説明が付かないことも、東洋医学では多くの場合で説明が付きます。しかも結構この東洋医学的視点からの論理は納得できることが多いのです。

 

 

次に私がよく治療中にお話しする単語の意味を記します。

 

気滞(きたい) 

気滞とは、生体エネルギー(気、プラーナ、オーラ、波動とも言います)がうまく流れずに滞った状態を言います。問題なく流れていれば、健康体でいられます。が、人はストレスやケガ、環境要因、そして感情によってその流れを阻害されてしまいます。

 

気滞による痛みは脹痛(張った感じの痛み)が特徴で、その痛みの場所がよく移動します。気は動くものですから、痛みの場所も移動するのです。

 

水道管によく例えるのですが、水道管が詰まってくると当然のことながら、蛇口からの水の出が悪くなります。それと同じで、流れるべき物が流れていないため、体がだるくなってきたり、変な鈍痛、夜間痛、頭痛等が出てきたりします。最近よくTVなどで耳にする『未病』は、水道管がつまり始めたけどまだ体には病気としての実感も症状も全くない状態をいいます。進行して詰まりがさらにひどくなったり、完全に詰まると病気としての症状が出てきますし、痛みや不調として実感します。

 

この場合、詰まりの程度と場所によってはその部分が膨らんできます。まるで詰まった水道管が膨らむのと同じように。多くの人がこの膨らみを自分が『太ったから』と勘違いされているのが見受けられます。この詰まりを取り除いて本来の水の流れ(エネルギーの流れ)を元に戻せば、自ずと体の不調が取れますし、膨らんだ部分も徐々になくなります。

 

体調が悪い、と言うときは気滞の数が多いしまたその気滞も強いです。

 

 

瘀血(おけつ) 

東洋医学では気が流れるから血(けつ)が流れると考えます。そして流れる血によって気が滋養されます。ですので気の滞りにより血が流れない場合、栄養不足等で気が滋養されない場合のどちらでも瘀血が形成されます。気の流れは食事や環境だけではなく、感情の動きでも簡単に乱されます。ストレス過多、ストレス発散がうまくされていない場合は、てきめんに瘀血形成の原因となります。

 

瘀血による痛みは夜間痛や鈍痛、固定性の痛みが特徴です。気滞による痛みのように、痛い場所が移動したりしません。

 

なぜ血管以外のところから血(瘀血)が出るの?と言われます。血管というのはゴムホースのようなものとよくたとえられますが、確かにその弾力性はそのたとえで合っています。しかし、実際の血管は穴だらけです。その穴から白血球やマクロファージなどが這い出しているのが事実です。

 

気が流れなければ血流が滞ります。そして組織の隙間(実際の人体はびっちり何か詰まっているわけないのです)特に皮下に血管からしみ出てきた循環しなかった血がたまります。これが瘀血です。西洋医学的には皮膚の直下には網の目のように毛細血管が走っているので、瘀血は鍼が血管を突き破ったからだ、といいます。その言い分が正しいなら、体中何処に鍼を打っても出血するはずです。ですが実際は違います。本当に瘀血がたまっているところだけからしか出血しません。

そして瘀血を鍼で体外に出せたとき、痛みや痺れが実際に楽になります。これは体験した人でなければわからないことですが、事実です。

術者としても、刺鍼部位から瘀血が出たと言うことは、いかに患者さんの状態が悪かったかという指針になっていますし、同時にその瘀血が溜まっている場所を的確に見つけることが出来ているという証拠にもなっています。

 

瘀血はこのような皮膚直下からのもの以外では、下血や経血、鼻血も瘀血と考えます。つまり、血管以外からの出血は全て瘀血と言っても良いです。また、便秘も基本的には瘀血が原因と考えます。

 

東洋医学では、瘀血を長い年月ほうっておくと、それが腫瘍(がん)の原因と考えます。

 

瘀血はできたてだと非常に薄い色合いだったり透明だったりします。瘀血の古さや気滞の大きさ、経絡の痛み具合によってどんどん色が濃くなりますし、量も多くなります。写真のページに私の体から出た瘀血や患者さんから出てきた瘀血の写真を載せてあります。まるで水のような瘀血の場合もあります。患者さんの許可を得て写真を載せてます。

 

 

経穴・経絡 

人体の内外を流れている生体エネルギーの流れです。経絡は地下水や川の流れ、経穴はその地下水が地表に湧き出しているところや川が合流したりしているところ、と考えてください。

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