治療方針
治療方針を述べる前に一言。WHO(世界保健機関)が提唱しているように、身体的に、心的に、そして霊的に健康である事が人生で一番大切なことです。年収、家の大きさ、肩書き、イケメン、美女、家柄、持っている物等々、そんな些末なことは健康に比べたら何の意味も持ちません。このことを実に驚くほど多くの人が全く理解していないのが現代です。健康であるからこそ、日々の行動で不都合を感じずに、何の悩みもなく自分の思い通りに体が動いてくれて、自分のしたいことが自由にできると言うこと。この奇跡をどれだけの人が感謝していることでしょうか?多くの病気は、大切なことを忘れている事をその本人に教えるために与えられているのでは?と感じることがとても多いのです。それを証明するかのごとく、病に苦しんで初めて「健康のありがたさ」を理解する人があまりにも多いのです。
私の治療方針は、自分が受けたいと思う治療を常に心がけています。当然、極力痛みのない施術を行うようにしています。ただ、毛穴に鍼が入ったときはかなり強い痛みが出ますので、その時には直ぐに鍼を抜きます。毛穴は肉眼でわかりません。毛穴に入ってしまうのは、何千回に一回くらいです。
『医療者は、患者さんの自ら治ろうとする力の手助けしかできない』
を根本とし、あくまで
私のする治療は患者さん自身の治癒する力の補助に過ぎないこと、決して私が患者さんを治したのではなく、患者さんが自らを癒したのです
ということを常々伝えています。
私はいつも、
「治ってくれたご自分に感謝です。
ご自分の体に対して最大限のお礼と感謝を。
私に対して感謝を述べる必要はありません。
良くなったら、私のことは忘れてください。
それよりも、健康のありがたさを決して忘れずに」
と患者さんに伝えます。ほとんどの患者さんがこの意味を理解されません。患者さん自身の体が、自分の体を治している、という事実であり真実を知らないのです。ですが、この真実を理解された方の治る速度は驚くほど早いのです。だれが治癒の主人公なのか、それを思い出させるのも医療者の仕事と考えます。
医療者は治癒に関する主人公では決してあり得ません。
治癒の主人公は患者さん自身です。
ですから、自分自身で治ろうと心底の努力をされない方は治りませんし、ましてや、治ろうという心底からの努力をしない人を他者が治る手助けができないのです。
近代外科学の創始者と言われる、アンブロワーズ・パレが残したと言われる言葉があります。
「我包帯す、神、癒したまう」
人間ができることは、包帯を巻くことだけであり、癒しは神の領域である、ということです。これが真実です。決して医療者が患者を治しているのではないのです。
私の施術はセラピューティックタッチを併用します。この技術のおかげで直接患者さんに触らずに氣滞(生体エネルギーのブロック・滞り)の場所が分かり、そこに水性マーカーで印を付けた後、消毒をし、鍼または灸を行うことによって滞っていた氣を流します。また、鍼を刺してある間、もしくは鍼を抜いた後にセラピューティックタッチにて氣のバランスを整えます。鍼は患者さんの体が伝える通りの必要最小限の本数しか打ちません。
症状が重い人ほど氣滞の数が多く、またその滞りの程度も強いです。氣滞の数が多ければそれだけ鍼の本数も増えます。逆に、症状が軽くなって氣滞の数が減ってくると使用する鍼の数も減ります。使用する鍼の数でその時の体の状態を把握できます。使用本数が増えたら何か無理をされたとか、逆に減ってきたら良くなってきている、というように分かります。
多くの鍼灸師が行っている深く刺す鍼も必要がない限りいたしません。(ほとんどの場合において私の刺す深さはだいたい2〜3ミリ以下ですし、それで十分だからです。)しかしながら、必要なときには筋肉を狙う治療も行います。
私自身、アメリカなどの諸外国では、医学部卒業時に誓う「ヒポクラテスの誓い」も遵守しています。
ヒポクラテスの誓い(原文:小川鼎三訳)
『医神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。
- この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わが財を分かって、その必要あるとき助ける。
- その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。
- そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
- 私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
- 頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
- 純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
- 結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするものに委せる。
- いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。女と男、自由人と奴隷のちがいを考慮しない。
- 医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る。
- この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい。』
当院では全身治療のみを行います。多くの鍼灸院や鍼灸接骨院では、患者さんの訴える局所だけ(もしくは背中側か腹側のみ)治療を行うのがほとんどです。これでは西洋医学となんら変わらず、単なる対症療法に過ぎず、本当に悪いところの治療ではないため、いつまで経っても治りません。患者さんが訴えるその痛みの場所は、実は関連痛であって原因は別の所にあることが非常に多いのです。
例えば足首を捻挫します。当然痛めた箇所への局所治療は必要です。ですが、捻挫によりその部分をかばうため、体全体に歪みが生じます。この歪みは局所だけの治療では当然取れません。局所治療と同時に全身治療をしてはじめて効果が現れます。局所が治ると同時に全身の状態も良くなっている、という具合です。
関連痛という例では、患者さんが痛みを訴える場所には氣滞が存在せず、セラピューティックタッチによって見つけた場所に治療を行うことによってその痛みが取れることから分かります。患者さん自身は「なぜ痛いと言っている場所に治療をしないのだ?」と疑問に思うようですが、上記の通り氣滞のある場所、本当に悪い箇所と痛みを感じる場所は違うことが多いです。
私は木(局所)を見て森(全身)を見ない治療は致しません。全身治療を行い、施術できるのが東洋医療者であり、そして、正にそれこそが東洋医学の神髄だと考えるからです。ですから、背中側・お腹側の両方、全身頭の先からつま先までしっかりと診させていただきます。
全身を診る鍼灸師は少数派です。理由は私のように本来の意味での全身治療を行うと、時間とコストがかかるからです。局所治療のみを行う診療は早く終わりますから、一定時間内に診られる患者さんの数が増えます。当然、その方が収入が増えます。それどころか、局所治療しかしない・できないのに、平気で「全身治療をしました」と言ってのけるエセ治療者が後を絶ちません。対症療法ではなく根治療法を求めるのならば、本当の全身治療を受けるのが一番の近道と言えるでしょう。
・望診
お会いしたときより既に診察を開始しております。顔色、歩き方等々体全身を診ることです。
・聞診
患者さんと話をしながら声の状態やにおいを診ます。
・問診
症状をお聴きします。
・切診
セラピューティックタッチにて氣滞の場所を探ります。必要なときには脈、舌、筋肉の張り等を診ます。
・施術
実際に鍼や灸を行います。
全身を診ますので、お腹側か背中側、どちらかから先に治療を行います。 腰痛等痛みががひどくて横になれない場合、患者さんの一番楽な姿勢のまま(立ったままや椅子に座った状態でも構いません)治療を行います。 多くの病院や治療院では、治療者が診やすい姿勢を患者さんに取ってもらいますが、これは全く意味がありません。 主体はどちらであるのかを完全に勘違いしているから、患者さんに痛みを我慢させ、治療者が治療しやすい姿勢を取らせるのです。治療者は患者さんがいかなる姿勢でもきちんとした治療が出来るようにトレーニングを積むべきなのです。あくまで主体は患者さんであり治療者ではありません。
・鍼・灸の使い分け
セラピューティックタッチで感じた氣滞の種類によって使い分けます。
- 冷感 → 灸
- 熱感 → 鍼
- 張り → 鍼
- 吸引 → 灸
- 電氣様 → 鍼または灸
・フォロー
治療後の様子について尋ねたりします。
・治療後の注意
早い人は治療中から、多くは治療後30分から1時間後ぐらいに、今まで体の中に潜んでいた疲れが一気に表面に出てきて、何とも言い難い眠気と怠さを感じることがあります。それらを感じたときには30分から1時間程度眠られると、気だるさも取れてすっきりします。自分では気がつかなかったが実はこんなに疲れていたんだ、と言うのが実感としておわかりになります。
- 成人の手術後または化学療法による吐き気
- 嘔吐と術後歯痛に対して有効
- 薬物中毒
- 脳血管障害のリハビリ
- 頭痛
- 月経痛
- テニス肘
- 繊維性筋痛症
- 筋性疼痛
- 変形性膝関節症
- 腰痛
- 手根管症候群
- 喘息の治療
の補助または代替医療として有用な可能性あり
1979年にWHO(世界保健機構)が43の鍼灸治療対象疾患を羅列しましたが、このときのWHO選考委員は中国人医師だったようで、あまりにも中国鍼灸を売り込むという態度が強すぎました。バイアス(偏り)が強くかかりすぎていましたし、また十分な医学的臨床試験もありませんでした。
現在も世界中で鍼灸治療の効果について研究が続いています。論文も発表されています。ですが全ての科学者を納得させることができるものがありません。術者の知識・技術、氣を感じることができるか、正確な診断・取穴、患者さんとのコミュニケーション力など、そういったことが鍼灸治療では大きく関わってきます。研究も西洋医学の様に誰がやっても同じ結果が出る、ということはまず無理でしょう。なにしろ『氣』という現代科学では探知も測定もできないものが基礎となっている医学です。ここが鍼灸治療の『科学的効果』の見極めの難しいところだと思います。『科学的』を求めると、誰がやっても同じような結果が出なければ『科学的』と認められないからです。
NIH、 WHO以外でもイギリスのNHS(National Health Service:国民医療サービス)においても鍼灸治療を研究しています。ポルトガルでも研究が進んでいると聞いています。
西洋諸国では、鍼灸治療がなぜ効果を出すのかよく分からなくても、患者さんに明らかな効果が見られるという理由で患者さんの治療に積極的に使われています。
契約している保険内容にもよりますが、痛みに対する鍼灸治療なら全て保険が利く、と言うこともあります。(カナダの方の保険がこれでした。)これらは日本よりとても優れている点です。日本ではなぜか科学的作用機序が明白にならない限り、決して信じないし治療にも使わないという態度が大多数です。その結果、被害を受けるのは患者さんです。本当に悔しいです。
そんな西洋医学の治療法や薬が、すべて科学的証明されていると思いますか?科学的証明というのは、再現性がなければなりません。だれが行っても、同じ結果が出なくてはいけないのです。西洋医学はそれができていると思いますでしょ?違います。実は再現性が全くない、つまり同じ結果が全く出ない治療法や薬がゴロゴロあり、それら科学的根拠のない治療法や薬が公然と患者に使われているのです。その西洋医学が、科学的根拠がないという理由で東洋医学を排除するのですか?なぜそんなことができるのでしょう?
代替医療では当然のこととして語られていた理論が、過去において西洋医学からバカにされ、完全にニセ医学と言われていたことが、今では西洋医学がそれが正解であったと認め、むしろ西洋医学で率先して使われている理論がいくつもあります。
具体例を一つあげましょう。代替医療ではよく言われていた「リーキーガット(腸漏れ)」という言葉と症状。大腸を主な場所として起こるもので、大腸の腸壁細胞の結合が緩み、大腸内の毒素が大腸から漏れて血管に混入したり、逆に体液が大腸内に大量に流入するために下痢が頻回起こるというものです。西洋医学は、「そんな腸壁細胞の結合が緩むなんてことが起こるわけがない」と長い間言い続けてました。ですが今ではそれが当然のこととして説明されます。このリーキーガットが全身症状のみならず、脳症状まで関与していると言われてます。今まで散々「あり得ない理論だ」とバカにして見下してきた、代替医療の見地が正解であり、西洋医学の方が無知無能だったということです。こんなことがザラにあります。今後、もっとそういったことが増えてくることでしょう。
上記NIHの治療対象リスト以外の疾患に対しても、有効であるケースが多いのが事実です。一般的に鍼灸治療は整形外科疾患が対象と思われるでしょうが、内臓疾患や西洋医学で治療法がない疾患に対して、近年特に患者数が多い慢性疾患に対しては東洋医学の方がよい結果を出せることが多い様に見受けられます。例えば、私の友人はパーキンソン病を専門で診ていますが、鍼灸治療を西洋治療と併用すると、患者さんの服薬量が減らせたり、ADL(日常動作)の明らかな改善が見られると学会にて発表しています。日本ではようやく一部の医師がパーキンソン病に対する鍼灸治療の有効性に気がつき始めたところです。西洋諸国ではパーキンソン病に対して鍼灸治療をすでに取り入れています。
西洋医学では、患者さんは痛みや不調を感じているけど西洋医学の検査等で異常が見られないと、医師は基本何もできません。
なぜなら西洋医学では、
検査(疾患確定のための必要条件があるかどうか?)
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検査結果(疾患確定のための必要条件を満たしているか?)
⬇️
確定診断(検査結果により、疾患と判断する必要条件を満たしていた場合のみ)
⬇️
治療開始
という流れが必要だからです。病が確定されるというのは安心感に繋がりますが、逆に言うと確定されない限り治療が始まらないのです。ですが東洋医学なら、未病(発症していない・検査結果が不明で確定診断が出ない)状態でも対処・治療可能ですし、それら痛みや不調を改善したり取り除くこともできるケースが多いのが事実です。
東洋医学は、鍼灸治療は西洋医学と敵対するものではありませんし、西洋医学に従属するものでもありません。どちらの医学も病に苦しむ患者さんを助けるために存在しているのです。適材適所でお互い足りない部分を補い合いながら、患者さんのために動けばこんなに素晴らしいことはないのです。日本でも統合医療とか言われ始めていますが、海外と比べるとその差は歴然としています。なぜ、日本では諸外国のようにお互いに足りない部分を補おうとしないのか?簡単です。西洋医師たち、つまり医師会および厚労省が東洋医学というものを認めようとしていないからです。自分たちの利権が脅かされるのを恐れているからに他なりません。